いま古流剣術が面白いーー新陰流兵法とは何か (4)
新陰流の稽古
いよいよ新陰流に入門する。まずは、礼法。次に撓い(竹刀)の握り方、振り方、型習得と稽古が進むことになるが、ここで、剣道と大変な違いがあることを思い出した。道具の事である。また話を元に戻して恐縮だが、剣道とは大き過ぎるほどの相違があるので、説明しておきたい。いつまでたっても話が進まないが、ご容赦を。
現代剣道の大きな要素の一つになっているのが防具の着用である。テレビ等でご存じのことと思うが、剣道は面、胸、篭手、垂で身を防御する。こうした防具を着け、竹刀を使って攻防する。竹刀の材質は分厚い竹やカーボンである。また、稽古の形式は型稽古ではなく自由稽古が中心だ。剣道の竹刀は分厚い竹を束ねて強化しており、これで防具なしの相手を自由に打ったら、間違いなく大怪我をする。場合によっては大事に至るだろう。
これに対して、新陰流をはじめとする多くの剣術はごく一部の流派を除いて、面、篭手などの防具を使用しない。稽古は木刀または袋撓い(後程説明)を使って行う。新陰流は柔らかな袋撓いを使用した型による稽古である。古流剣術は専ら型を稽古するので相手の攻撃箇所は事前に分かっている。型には、こう来たらこうして、こうしたらああして……最後にはこうやって勝つ、というストーリーがある。使太刀(生徒)が打太刀(先生)に勝ちを収めるまでに互いに秘術を尽くすわけだ。その型を繰り返し稽古して技術を錬磨し実力を養成する。誤解を恐れずに言えば、型は「殺陣」に似ているといえなくもない。
型は事前に攻める、受けるの手順が決まっており、原則実打はしないので、木刀や袋撓いをもって稽古すれば比較的安全である。だから剣術では防具を必要としない。つまり攻撃する用具(竹刀)の違いと、稽古の形式が異なるために、防具を使うか使わないかという大きな差が生じているのである。しかし、剣術が発祥したころの昔は刃引きの刀か頑丈な木太刀で稽古したので、手順を間違えたり、手元が少しでも狂うと大怪我につながった。
そこでこうした事故を避けようと工夫されたのが袋撓いである。袋撓いというのは、直径三センチほどの丸竹を八つに割り、牛皮(初期は鹿皮)の袋に差し込んだ竹刀である。割った竹に皮袋を被せてあるので打たれても怪我はしない。刀部二尺五寸で全長は三尺三寸。これを発明したのが新陰流の流祖上泉伊勢守である。(続く、睡猫児)